『僕は優しいんじゃなくて、優しいふりをしているだけだよ』
鮎川賞受賞作で、2025年本屋大賞ノミネート作です。
兵庫市民病院の救急医、武田航(わたる)。
ある日、運ばれてきた一体の溺死体、キュウキュウ十二。
それは、武田に瓜二つの男だった。
導入部分からまず引き込まれる。
医者と同じ顔した遺体って・・・どういうこと?
ファンタジー的なタイムスリップだとか、並列世界的なオチだと
がっかりすることがあるけど、この話はちゃんと論理的に解決するので大丈夫です。
そして友人の医師、城崎(きのさき)と自身の出生の秘密を調べ始める。
辿り着いた先、生島リプロクリニックで自分のルーツを知る人間にアポを取り、
会おうとした矢先に相手が密室殺人で殺されてしまう。
おじいさんの財布の件とか、クリニック初訪問時とか、
城崎さんが、まぁ優秀。医者じゃなくて探偵でもやっていけます。
密室殺人の謎、そして武田の出生の謎、そして犯人が分かったとき、
うわぁ・・・って声出てしまいました。許されるんか、これ。
背理法的推理も見事でした。
今作ではミステリー部分もさることながら、
謎の答えを知ったあとの、武田の行動や生き方のほうが印象深かったです。
最後のタイトルの禁忌の子の意味が分かったときはもうね。
武田さん、強く生きてください・・・。
作者の山口 未桜さんは元医師ということもあり、
その経験が作中のいろいろな語句やエピソードに活かされています。
しかも、一歳の子供を育てながらこの小説書いた・・・だと。
もう、この作者が凄いわ。
今回の探偵役、城崎医師が主人公の2作目も刊行されているようで。
そちらも読んでみたいと思います。